@Ishmael_Novok_4321 「読了後に得るものが主人公の自己満足だけということが多くて」……確かに。ヴェルマの行ったところまで見えようが見えまいが、警官にさよならをいう方法を見つけようが見つかるまいが、探偵は何ひとつ変わらないし成長もしない。そういう小説だからといえばそれまでですけが、人間ならもう少し何かあるんじゃないのと思わざるを得ません。わたし自身も、自分の人生に対して、もうすこし心をひらいてもいいのかもしれません。歩行器を押すチャーネットのように。
このあたりはガルシア・マルケスの『コレラの時代の愛』のオマージュです。一つ違うのは(あえて明示しませんでしたが)チャーネットはアニーの夫、モフェットの死を待っていたのではなくて、ずっと踏ん切りがつかなかった。時代は大きく変わっていき、自分はすぐにでも消えてしまうかも知れない中で、小さいが大きな冒険というものを描きたかったというのがあります。『汝の母~』のアルバートとは対照的ですが、アルバートを無責任などうしようもない男として突き放したくないとも思っています。
@Ishmael_Novok_4321 正確なことばは忘れましたがフィリップ・K・ディックが、取るに足りないちっぽけな人間が、その凡庸な人生のなかでまれに見せる勇気みたいなものを書きたい、といっていたのを思い出します。はたから見たらなんの価値もないことなんですけどね。でもそういうものが人間を人間にするのだと思います。